アラブや中東でコーヒーと言うと、細かく挽いたコーヒー豆を煮だして作るトルココーヒー(カフワ・トルキーヤ)が一般的です。
この方法でコーヒーを淹れる地域は意外と広く、オスマン帝国に支配された地域は大抵このタイプのコーヒーと言われています。
現在は国や地域によって少し名前が違うこともあり、例えばギリシャではキリシャコーヒー、アルメニアではアルメニアコーヒーと呼ばれています。トルコへの敵対心の表れでしょうか。
では、アラブではアラブコーヒー(カフワ・アラビーヤ)となるかと思えば、そうではなく、トルココーヒーと呼ばれています。
アラブコーヒーは、トルココーヒーと似て非なるコーヒー。
その手順は、ポットに湯を沸かし、挽いたコーヒー豆を入れ、何度か沸騰を繰り返し、20分ぐらい沸かしたら、カルダモン、ジンジャーなど、好みのスパイスを加え、サーブ用のポットに移し替えます。基本的に砂糖は入れないようです。
あとは小さなおちょこカップにちょびっと注ぎ、何度もお替りしながら飲みます。
冷めたらもう一度火にかけ温めることもできます。
私はシリアやエジプトに計6年以上住んでいますが、実はアラブコーヒーは数える程しか飲んだことがありません。
お店で出していることもないし、家庭でも普通はトルココーヒーです。
記憶にあるのは、シリアに住んでいたとき、友人宅で行われた、親戚が集まるちょっと大き目の年越しパーティーでのことです。
最初にウエルカムドリンク的に出されたのですが、その時は普通の魔法瓶に入れて、ちょっと苦めで色は真っ黒、トルココーヒーとは違い、沈殿物がないコーヒーでした。
他には、やはりシリア人のお宅で、アラブコーヒーを準備していたところに遭遇したことがあります。結構大き目の鍋でトルココーヒーよりも粗めに挽いた豆をグラグラと沸かしていました。これを濾して、更に水で薄めて、また沸かす方法で、厳密に言えば、カフワ・ムッラ、即ち、“苦いコーヒー”と言っていました。
ちなみにシリアに住んでいた当時、フィルターコーヒー用の豆を買うのに苦労していて、このカフワ・ムッラ用の豆でコーヒーを淹れていました。少し粗かったですが、何処でも手に入るトルココーヒー用の粉では、落ちる速度が当然遅く、カップ一杯完成したときは既に冷めてしまっていたのです。
エジプトだと、湾岸料理のレストランの入口で配っていたのを飲んだ記憶があります。色は薄めの緑、言われなければコーヒーとは分からない飲み物でした。
湾岸ではアラブコーヒーは日常的に飲まれているようですが、シャーム地方やエジプト辺りでは、日常的な飲み物というわけではなさそうです。
ところが、いつも行くスーパーにこんな商品が。
お湯に溶かすだけで飲める、インスタントアラブコーヒーです。
このスティック一本で100㏄、おちょこ3~4杯分できるよう。
早速開けてみると、カルダモンのいい香りが。
普通のインスタントコーヒーと同じく、お湯を注げば出来上がりという手軽さです。
色は湾岸料理屋さんでもらったコーヒーのように薄緑っぽく、
いわゆるコーヒーの風味というよりも、カルダモンの風味が強い気がします。
が、何せ、アラブコーヒーに関してはまだまだ素人なので、なんとも言えないです。はい。
このネスレのは、意外なことに韓国製だったりするのですが、この他にも湾岸諸国ではこの手の商品が結構あるみたい。
やっぱりあちらでは日常的な飲み物なのでしょうか。
エジプトでは確か一袋4ポンド(60円)で販売されていていました。4ポンドだと、缶コーラよりもちょっと高いぐらい。
そこそこお値段する気がするのですが、売れ行きはどうなんでしょう。
でも、話のタネとして、お土産なんかに便利なので、なくならないでほしいなぁ、と思うのでした。
トルココーヒーを作る鍋。国によって少しずつ違います。