地図を眺めていると、ポーランドの南に行けば、フムフム、チェコは近いんだな(当たり前ですが)、などと、よからぬ考えが浮かびます。
よからぬ考え、とは、チェコビールが飲めるのでは、ということ。国境でパスポートチェックがあるわけでもなし、国内旅行感覚でちょっとチェコに行って、さっとビールを飲む、これぞ現代のヨーロッパ旅行の醍醐味ではないか。いやいや、今回はポーランドに来ているわけだし、ポーランドを満喫するべし。でも、ちょっと、ちょっとだけなら…、とやってきました。
ポーランドーチェコの国境です。
ポーランドから見たチェコ。道の色が変わっている部分が国境です。
チェコ側からのポーランド。
当然ですが、入国審査などはありません。それどころか、人がほとんどいない。
チェコ側の地名は「マラー・ウーパMalá Úpa」といい、スキーリゾート地として知られています。
ホテルやレストランが数軒ありますが、今の時期はオフシーズンなのか、そのほとんどは営業しておらず、人はまばらです。
でもこんなのどかな景色が広がり、少数ですがトレッキングを楽しむ人もいました。
こんなへんぴな場所ですが、なんとなんと、ビールの醸造所があるのです!
2015年にオープンしたばかりの「Trautenberk Brewery」です。
ポーランドとの国境から歩いて3分!最もポーランドに近いチェコの醸造所ではないでしょうか。
まずは基本のラガー。バリング度(麦汁濃度)11%、アルコール4.7%。
チェコビールと言えばのピルスナーウルケルがバリング度12%で、だいたいそのぐらいの濃度が多かった気がするのですが、最近は11%のちょっと軽めのタイプが増えた気がします。
あ~、きれいな泡。ゴクリ、ゴク、ゴク、あ~、チェコ、チェコ様のビールだ。
爽快な苦みとまろやかな炭酸。そしてもっちりとした泡が均等に喉を通過していくこの飲み口。
実はポーランドで思ったようにおいしい!ビールにありつけていなかったのです。
いや、チェコと近いから、などと勝手にポーランドに期待していただけなのですが。
ポーランドもビールは生産量は多く、スーパーなどに行くと、ずらーっと様々な種類が並んでいるのですが…。やはり注ぎ方がいまいち。というか、あまりそこを重視していないように感じました。
ポーランドが特段ビールの注ぎ方がヘタ、というわけではなく、おそらくほとんどの国があんなもんなのでしょうが、チェコのビールの情熱を知ってしまうと、適当に注いだビールでは物足りなくなってしまうのです。
もう一度言いますが、ポーランドが特別ダメというわけではなく、自分の勝手な期待に敗れただけです。
こういうお店は料理もおいしい説。
大好物のビーフタルタル。オイルを染みこませてかりっと焼いたパンに生ニンニクをしっかりこすりつけて。牛肉に混ぜ込まれたちょっと粗めの生玉ねぎが、ねっとりした生肉によく合います。
定番バーガーもジューシーなパテとしゃきしゃき野菜がたっぷりでおいしい。
軽い夕食にはスープやサラダがいい。
ラガーの他に、ダーク、APA、エールが常時あるとのこと。時期によっては限定ビールを作ることもあるのだそう。
通りに面したスペースにはタンクが見えます。
ここに宿泊施設もあり、我々も1泊しました。簡素な作りですが、パステルカラーの内装がなんかかわいいです。
車はポーランド側に駐めて。車でチェコに入ることには何ら問題はないのですが、レンタカーの保険が確かポーランドのみでの適用だったはず。でも国境から徒歩3分ですからね。
ところで、国境って、異常に興奮しません?
この記事を書いている今、写真を見たり、グーグルマップで国境付近をズームにしたりしていますが、もうたまらんのですよ。
国境の写真を撮ったり、必要以上にウロウロしたりしていると現れる、関わったら笑い事では済まされないタイプの人達もここにはいません。思う存分国境を堪能できるのです。
日本には国境がない(ありますが)から、と思うでしょうが、違いますよ。私は県境や、もっと細かい町境にだって同じ感情を抱きます。
ポーランドとチェコの国境は入り組んだ場所も多く、次の目的地までグーグルで検索すると、チェコを通過するルートが表示されることもあります。
今回は保険の都合上、こういったルートは避けましたが、チェコに極めて近い場所を走る場合もあります。
グーグルマップの青いぼんぼりと、実際の景色に交互に目をやり、チェコに最も近づいた瞬間、えも言われぬ喜びにあふれるのです。
大好きなビールと国境を一度に楽しめるここ。こんな魅力的な場所他にない!