約2週間のポーランド旅行。田舎町の小さな食堂の素朴な料理や、おまつりの屋台で食べたスナック、いろいろおいしいものに出会いました。
そんな中で特に印象に残っているお店のひとつが、ワルシャワ中心部にある
梅宮辰夫氏にちょっと似たシェフのRobert Sowa氏が手がける、伝統的なポーランド料理を現代風に、そして斬新なアレンジを加えた料理が自慢のお店です。
平日の夕方の早い時間なので、予約なしでも大丈夫かな、とふらっと寄ってみましたが、なんと席は予約でほぼ埋まっている様子。我々は1時間半程でよければ、と確認された上で席に案内されました。
うわー、思った以上に人気店!これは期待が高まる!
まずは付きだし。ヨーグルトとキュウリ、アサツキの冷製スープです。
かなりさらっとした食感ですが、ヨーグルトの味は濃く、薄まった感がありません。
おいしい。
続いて 一品目は「フウォドニック」というポーランドで定番のスープ。鮮やかなピンク色がきれいな、ビーツとサワークリームの冷たいスープです。具にゆで卵を入れるのがお決まり。
このお店はウズラの卵にフェタチーズが入っていました。
どれどれ一口…、むむ、こ、これは、なんかすごい攻撃してくる。
言うならば、ワーッっと戦国時代の戦が始まるときの音が、口の中に広がるよう。
おいしいです。すごくおいしいですが、それ以上なのです。
素材がよい、とか、新鮮だ、とか、火の通し方がうまい、とか、よくある褒め言葉では収まらない、とにかくビシビシ攻めてくる。
これは、こちらとしても生半可な気持ちで臨んでいてはやられてしまう…。
こちらは鹿肉のカルパッチョ。マッシュルーム、ルッコラ、チェダーチーズ、くるみが添えられ、ラズベリーの蜂蜜入りドレッシングがかかっています。
柔らかな肉質とは裏腹に、ガツンと濃い肉の味。ねっとりしたチーズはほんのり香ばしく、ルッコラと一緒に鹿肉で巻いて、おいおい、戦国武将がまたやって来た。
口直しのラズベリーのソルベ。口に入れるとすっと溶けてなくなるのに、その後にほのかな酸味。その味をもっと口の中で転がしていたいのに、すぐ溶けてなくなるのです。
メインはアスパラガス。イタリアはサン・ダニエーレの生ハム、アヒルの卵に黒トリュフ、ソースはもちろんオランデーズソースです。
メニューの「温かい前菜」からのチョイスですが、メインとしても大満足のボリューム。市場で旬のアスパラガスを見て、どうしても食べたかったのです。
強い甘みとちょっぴり青臭さいアスパラが、生ハムの塩っ気によく合います。
アヒルの卵も市場でちょこちょこ見かけて気になっていました。味については、正直なところ、ニワトリの卵との違いがわかりませんでしたが、いい具合に火が通してあり、黄身を崩して白アスパラに絡めて食べるともう!
この料理が登場して、自身を取り巻く空気が一気に変わった気がしたのです。ジャン!と大きな音がして舞台が一瞬暗くなって、全く違う場面になったときのよう。その原因はトリュフの香り。トリュフは香りがよい、なんて言われますが、ここまで主張するのか。
ぐー、攻めてくる。
もう一つのメインはアヒルの胸肉のコンフィです。ジンジャーソースにオレンジとさつまいものピューレ、梨、ビーツが付け合わせです。
この料理が運ばれたとき、夫は「ああ!」と声にならない声をあげてしまいました。
我々の思っていたアヒルのコンフィーよりも美しく、力強く、ミステリアス。イメージは夏木マリさんでしょうか。
アヒルの胸肉はふわっと柔らか、でも確実に肉質はある。これが胸肉?コンフィだとしても?
ピューレはどこまでも滑らか。ソースにはもしかしたら醤油をちょっと使っているのかな。食べたことがある気がするけど、食べたことない、こんな料理初めて。
最後の最後まで、攻めの料理でした。味が濃い、というわけではありません。奇抜な味、というのも違います。ただただ攻めてくる。
偉そうな言い方なのは重々承知ですが、時々こういうことが起るのです。ただおいしいのではなく、食べる側も自然と姿勢を正して臨んでしまうようなのが。
私は精神論はあまり好きではありません。しかしながら、作る側の気迫がビシビシ伝わるような感じはある気がします。
気になるお値段ですが、これらのお料理とビール2杯、炭酸水1本、パンで確か330ズロチ(約9900円)でした。日本より物価の安いポーランド、そこそこいいお値段です。お客さんも少しフォーマルな会食、といった雰囲気の人が多い模様。でもでも、決して他では味わえない料理、そして嫌でも料理から会話が広がる、そんなレストランでした!大満足!