この地に足を踏み入れる観光客で、ピラミッドやスフィンクスなどの遺跡を訪れない人はいないと言っても過言ではないエジプト。日本からの観光客はほとんどその遺跡を目指してやってきますが、ヨーロッパやロシアなどからは、実は海をめざして訪れる観光客も多いのです。
北は地中海。東は紅海。海に囲まれたエジプト。
特に有名なのは、シナイ半島先端の「シャルム・シェイフ」、カイロから車で5時間ほどの「ハルガダ」でしょうか。
世界中のダイバーあこがれの地、なんて文句もよく見かけます。
ヨーロッパ各地から主要リゾート地への直行便もあるので、この辺りの人々はカイロには寄らずにリゾートを満喫しにエジプトへやって来ることも珍しくありません。
革命直後の観光客激減の時期でも、このリゾート地は変わらず賑わいを見せていたと聞きます。
日本人が手軽にタイなどのビーチへ出かける感覚でしょうか。
以前はロシア人が多かったのですが、2015年のロシア機墜落で、なんと直行便の運行は中止。
無敵の紅海リゾートも、大打撃を受けたのでした。
私が初めてエジプトのリゾート地に足を踏み入れたのは、遅ればせながら2015年の春。
エジプト最南端の「マルサ・アラム」でした。
カイロからバスで11時間かかるものの、ここ数年で開発が始まったマルサ・アラムは、古くからあるハルガダやシャルム・シェイフよりも抜群に海がきれい、などと聞いたのです。
特に海に興味があるわけでもないし、ホテルでずっと過ごすなんて、リゾートなんて、と思っていたのですが…。
あー、バカバカ。この楽しさをもっと早く知っていれば。
美しい海もさることながら、この辺りで一般的なオールインクルーシブに目覚めてしまったのです。
オールインクルーシブとは、滞在中の食事と飲み物がセットになったプラン。
朝昼晩の食事の時間は決まっていますが、その間の時間には軽食が用意され、ビールなど、アルコールを含めた飲み物も飲み放題となっているのです。つまり、財布を全く使わずに滞在できるのです。これが、こんなに快適だとは。
ハルガダやシャルム・シェイフなどの町だと、ホテルの周辺にレストランは多いですが、その他の紅海沿岸のリゾートホテルだと、周りには基本的には何もないので、オールインクルーシブにする必要があるかと思います。
紅海沿岸に遊びに行くには、カイロからだと「GO BUS」という会社のバスが、考古学博物館裏手の「アブドゥル・ムネイム・リアド」から出ています。チケットはオンラインでも買えますよ。
深夜にカイロを出発して約6時間。真っ暗な道をひたすら走り続けていましたが、ようやく明るくなってきました。
今回泊まったのは、マルサ・アラムより少し北、コセイルという町に近いホテル「Radisson Blu Resort」。
ロビーにはデーツやビスケット、飲み物があり、部屋の準備できるまで、自由に楽しめます。
館内はブルーが効果的に使われており、心躍る素敵な雰囲気。
レストランは、オールインクルーシブに含まれているブッフェのレストランと、別料金のアラカルトレストランの2カ所。
ここに限らず、エジプトのブッフェって、パンの種類が異常に多い気がする。
フルーツコーナーには、ナツメヤシがあります。
これは「ルタブ」という、ちょっとフレッシュなタイプ(ルタブにもいろいろあるのですが)。
出回る時期も限られており、要冷蔵なので、お土産には難しい。見かけたらトライすべし。
皮を剥いて食べます。
いつものいわゆるデーツとは違い、シャックリ、甘みもそれほど強く感じません。
これは、フルーツ、しかもフレッシュなフルーツなのです。
盛り付けがアレですが…。
ランチやディナーのブッフェは、日によってメニューが異なるので、飽きずに食べられます。
この日は魚のフライに、イカのグリル。
レモンをギュッと絞っていただきまーす!
チキングリルや、煮込み料理、子羊のローストなど、エジプト風の料理もあります。
朝は卵を焼いてもらえます。
私の朝食。オムレツに焼きたてワッフル。ニンジンサラダにタッブーレ。
朝のメニューにも、エジプト料理、例えばフール(そら豆)やビリーラ(麦のミルク煮)、エジプトのチーズなんかも豊富なので、ちょこちょこ試してみるのもいいのでは。
お腹がいっぱいになったら海に行きましょう。
紅海は遠浅なのが特徴で、海初心者にはもってこい。
それよりこの透明度。こんな美しい海、なかなかお目にかかれないのでは。
ダイビングをしなくとも、シュノーケリングだけで色とりどりの魚を見ることができます。
足が届く深さなので、気軽に楽しめる。むしろ、巨大ウニがお腹に刺さりそう。
一方で、珊瑚は踏まれてしまったのか、既に死んでいるものが多いです。
観光開発されると、このような問題が起ってしまいますが、残念なことです。
桟橋からはより深い海に降りることができます。
紅海は一般的な海よりも塩分濃度が高いため、簡単に浮くことができます。
そのためか、ライフジャケットを着用せずにシュノーケリングを楽しむ人がほとんどでした。
監視員はいるものの、自己責任です。
なんか怖いな、なんて思いながら、階段を降りると…。
ぶわーっ!何じゃこりゃ-!竜宮城ってこんな感じなのだろうか。見たこともない色の魚の大群、にょきにょき生えた不思議な色の珊瑚。いや、写真なんかでよく見るけど、そういうことだったのか。
と、真下を見ると。ぎゃー。底なしブルー。
突然の恐怖で、軽くパニック。ついには階段から一度も手を離すことなく、私の竜宮城体験は終了したのでした。
一瞬の出来事。目に焼き付いて離れない景色とはこのことか。
人はこの興奮を求めて更に潜るのだろうか。
でも私はたぶんパニックになるので、潜ることはない、と思う。
このホテルにはプールが2つあり、その一つは温水プール。
じんわり暖かく、夕暮れ前に入ってのんびりするのが気持ちよい。
バーがあるので、ビールも楽しめます。あー極楽。
海やプールでザブザブ泳ぐ、というよりは、ビーチで寝そべって日焼けしたり、のんびりしたり、がヨーロッパの方の過ごし方。
客層は、年配の夫婦やカップルが多く、ウェーイという人はいないので、私のような人間でも過ごしやすい。
エジプトにありながら、お客のほとんどは外国人(従業員はエジプト人ですが)。
エジプト人のお客も時々いますが、この状況についてどう考えているのだろう。
自分の国なのに、アウェイ。
思う存分アウェイ感を味わうがよい、なんて、私などは思うのですが。
部屋は古さを感じるものの、淡いブルーでペイントされてかわいらしい。
ベランダは広め。
夜はバーでくつろげます。
ちょっとしたカクテルなんかも作ってもらえます。
このホテルに限った事ではないのですが、多くの従業員はエジプト各地から住み込みで働きに来ています。彼らの寮がホテル前にあることも多いのです。
テロやら飛行機墜落やらで、ある日ぱったりお客が来なくなってしまう危険のあるエジプト。いや、今は世界中がそうなのでしょうか。
観光産業が打撃を受けると、この膨大な数の働き口が一気に消えてなくなる、と思うと、リゾートって儚いな、などと考えてしまうのです。
そうそう、ここら辺のホテルから、ルクソールへは車で3時間程。
昼間は遺跡観光をして、泊まりはリゾート、なんていうルートも組めます。
ホテルにも旅行会社が入っており、車をチャーターしてもらえるので、ゆっくり海を満喫しながら、思い立ったら遺跡を見に行く、というのはどうでしょう。
ホテルで3日間を過ごし、チェックアウト後、コセイルの町に行ってみました。
町の入り口にはボートの上のアッラー。
海辺のレストラン。
子供達が海に飛び込んだりしているのが目に入ります。
あの子達は竜宮城の世界を知っているのだろうか。
手前は「シャッファーフ」という赤魚のような魚。丸揚げにしました。
奥は「シュウール」(フエフキダイ?)のグリルです。
魚料理は日本がどう考えても世界一だと思うのですが、魚の丸揚げって異常においしい。
コセイルの旧市街は独特の雰囲気。
小さな子供が遊んでいました。
かつてはメッカへ向かう船が出るなど、重要な港として栄えたコセイル。
現在は寂れてしまって、海辺の税関もポツンとだれもいない。
賑やかだった場所から人気がなくなると、もともとだれもいなかった場所よりも淋しく感じるのはなぜなのでしょう。