ちょっと裕福な親戚のお家のよう。それがこのお店の第一印象でした。
エレバン中心部にある「At Gayane's」は、古い家を改装した、アルメニアの家庭料理を出すお店です。
お店、と言っても、普通の家との違いはダイニングテーブルが数個ある事ぐらい。
貫禄のあるマダムが出迎えてくれます。
メニューはアルメニア語と英語両方ありますが、英語でもそのままアルメニア語をアルファベットにした物も多く、未知の料理にワクワクします。
サラダのコーナーからは「フレッシュハーブとマツォーン」をチョイス。
マツォーンとはヨーグルトに似た乳製品。正直ヨーグルトの違いがよくわからないのですが、強いて言えばラブナ(アラブの水切りヨーグルト)程ではないですが、若干ヨーグルトより濃いめかな、と思います(いろいろ種類があると思うのですが)。
英語で書かれたアルメニア料理の本でも、材料欄にはヨーグルトではなく頑なにマツォーンと書いてあることが多いです。
そんなに言うなら、アルメニア人にとってはヨーグルトとは全くの別物なのでしょう。
ディルやイタリアンパセリなど、シャキッとした香りよいハーブが濃厚で少し酸味のあるマッツォーンに絡んで、なかなかボリュームがあります。
スープはミートボール。
あっさり目の出汁ですいすいお腹に入ります。
ボリュームのあるスープが多いですが、これはちょうどよい。
羊のハシュラマは力強い旨味と独特の香りがガツンとダイレクトに味わえます。
余計な味付けではなく肉その物の凝縮された味。
ハシュラマとは肉と野菜の料理で、調理方法は様々なようですが、骨付き肉を使うのが基本のよう。
ガウルマとフライドポテト。
ちょっと油っこく、ねっとり甘いフライドポテトに、塩気の効いたお肉が相性抜群。
カウルマとは、肉を塩や脂で漬けた保存食。
アラビア語では「アワルマ、ガワルマ」などと、発音が微妙に異なります。
確かトルコにも同じような物があったはず。
満腹ですが、デザートはしっかり頼みましょう。
おなじみのバクラワは、表面はパリッと、フォークをあてるとシロップがじゅわっと。
ナッツは少なめですが、見た目よりもシロップが軽く、満腹でもぺろりと食べられました。
デザートその2はクルミのコンポート。
まだ緑の未熟なクルミを使います。
かじりかけで失礼します。
中心部分がいわゆるナッツのクルミ。
周りは殻になる部分です。
モソモソした食感で、意外と固いので、何個も食べられません。
慣れるとやみつきになるのでしょうか。
アルメニアのワインやブランデーをチビチビ飲みながら、他のお客の心地よい話し声に身をゆだねていると、マダムのピアノが始まりました。
どことなく重く、しっとりしたシナモンのような音色。
古めかしいこのお店の雰囲気と、暗いエレバンの夜になめらかに交わっていくよう。
時代を感じる素敵な調度品。
派手な料理ではありませんが、知り合いの家に招かれたような、そんな素敵な夜になりました。
なかなかわかりづらい場所にありますが(夜だったから?)、それもまたよし。