外国人労働者が人口の半数近くを占めるオマーン。彼らの多くはインド、パキスタン、バングラデシュから、単身、または家族を伴って働きに来ています。
地域によっては通りを歩く人々のほとんどが外国人労働者。ここはオマーン、と言うよりは南インド?というような光景が広がります。
町にはオマーン料理よりもインドを始めとした外国料理の店の方が多いほど。オマーンの食文化もインドやアフリカなどの影響を受けた料理が多く、他のアラブ諸国とはひと味違う食事が楽しめます。
例えばスーパーのパンコーナーを見ても、クレープよりも薄い大きな丸形のオマーンの伝統的なパンよりも、チャパティや、レバノンタイプのパン、トーストなどの品揃えの方が充実しています。オマーンのパンがないときすらあるのです。
オマーン人はパンよりも米をよく食べる、オマーンパンは家庭(の外国人のメイド)で焼く、などの事情もあるかもしれませんが、オマーン人にとってもチャパティーなどの元々は“外国”のパンも一般的な物となっていると言ってもよいのではないでしょうか。
(過去数世紀にわたってオマーンはインドや南アジアなど関係が深いので、ここ数十年の出稼ぎ労働者の影響だけではないはずですが)
オマーンの男性の伝統的な衣装は「デシュダーシャ」という、白地のワンピースのようなもの。湾岸ではおなじみの衣装なのですが、襟元が国ごとに異なり、オマーンは丸襟にタッセルのような飾りがついています。
頭にはクンマという刺繍入りの帽子をかぶり、正装時にはこの上にターバンを巻きます。
オマーン人は勤務中はこれらの着用義務があるよう。一方で、外国人の着用は禁止されているようです。
勤務中以外、どう見ても仕事中じゃないよね、という場合でも、デシュダーシャとクンマを着用しているオマーン人が多いように思います。
これで、誰がオマーン人か、そうではないのか、簡単に見分けがつくわけです(見分けたところで、特に意味はないのですが…)。
この規定の目的はわかりませんが、他の国でこの規定をしたらどうなるのだろう…。
しかしながら、あくまでも制度上で、ということですが、自国民とそうではない人との区別は何かしら必要だと思います。その全てが「差別」とはならないはずです。
この服装規定がよいのかどうなのかはわかりませんが。
話はそれましたが、星の数ほどあるインド料理店。レストランと言うよりは労働者向けの食堂といった雰囲気のお店も多く、目移りしてしまいそう。
そんな中、一番のお気に入りとなったお店がルイ地区(実際の発音はルウェイという感じでした)にある「Hyderabadi Restaurant」。
金曜日の昼に店に行くと、まだオープン前。どうやら金曜日は昼のお祈り後に開店するようです。
お店に続々と集まる人々。何となく来てみたけど、もしかしたら、このお店はアタリなのかもしれない…。
この時間はお祈り帰りと思われるパキスタン人などが町に溢れ、女性の姿はほとんど見られません。いや、女性だけではなく、オマーン人の姿もほとんどありません。
人口の約50%は外国人労働者です!と数字で見るよりもインパクトあるな。
このお店の名前にもある「ハイデラバード」は、インド中部の都市名で、ビリヤニが有名なのだそう。これは楽しみ。
町をブラブラしてお店に戻ると、既に満席。しかもお客は全員男性。
夫と一緒だったものの、何だか場違いなのかも、と思ったり。
ホワイトボードのメニューを吟味して待ちます。
注文したのは「チキン65」。初めて聞くこの不思議な名前、店頭の写真にもあって気になっていたのです。
なぜこの名前なのか。諸説あるようですが、正確には不明な模様。南インドで食べられている、がっつり辛みの効いた唐揚げです。
ちなみに、スーパーのお総菜コーナーでも見かけるほどポピュラーな料理。ビールのつまみに合いますよ。
「チキン・チャトパタ」は見た目よりもすっきりした味わいのソースがチキンに絡んだ料理。日本などのインド料理屋さんで食べると、こういうのが出てくるなぁ。
チャトパタは、ヒンディー語やウルドゥー語でスパイシーという意味らしい。
これに焼きたてチャパティを付けて。
途中から唐辛子などの香辛料の影響からか、体がポクポクしてきましたが、チャパティーをちぎって、ソースを拭って、食べる手が止まりません。
料理を頼んだ後で、しまったっ!と。
我々以外は全員ビリヤニを頼んでいたのです。しまったー!
注文を聞かれたとき、「何にする?チキンビリヤニ?」と早口で言われたのですが、ホワイトボードを暗記するぐらい凝視して、既にメニューを決め、イメトレまでしていたおかげで、インド人の早口に翻弄されなかったのは我ながらエライと思う。が、このときばかりはインド人に惑わされるべきだったのですよ。後悔先に立たず。ビリヤニはホワイトボードになかったじゃないかー。油断していました。
で、後日、再訪。
念願のチキンビリヤニです。
こんもり盛られたお米の中からは、骨付きチキンのぶつ切りがごろごろ。
米は軽く、チキンは旨味が凝縮。
ヨーグルトをかけながら食べるとさっぱりして、いつまでも食べられそう。
ビリヤニは3分の2ぐらい火が通るまで茹でた米と、チキンや羊などのいわゆるカレーのような具を鍋に交互にいれ、弱火で仕上げた料理。
広い地域で食べられているので、作り方はいろいろあるようですが、カブサなどとはまた違うおいしさがあります。
「パニール・マサラ」は、チーズのカレー。
キュキュッとした食感のチーズでボリュームがあり、肉なしでも大満足。
パラタはチャパティの生地に油を塗り折りたたんで焼いたパン。パイのような層ができます。
チャパティよりもリッチで、香りもよいのですが、食事に合わせるのなら、私はチャパティの方が好みかな。
瑞々しいキュウリや、生玉ねぎがこういう料理には合います。
この日は平日の夜。
オマーン人や、インド人の家族、テイクアウェイのインド人女性など、お客さんもいろいろで、金曜の昼よりは入りやすい。
食後はスパイスのきいたミルクティーもゆっくり飲めますよ。
で、そのまた後日。
今度はテイクアウェイにしました。
羊のビリヤニ。
お弁当箱のようなプラスチックの容器にぎっしり入っています。
米を掘り起こすと、骨付きの羊肉が、これまたごろごろ。
バターチキンは濃厚でクリーミーな香りと、ホロホロのチキン。
チャパティでつまんだり、ビリヤニにかけたり。
夢中で食べてしまうおいしさ。
インドに行かずともインドの味が楽しめる。オマーン、なかなかおもしろいな。