あなたの国の代表的なお菓子は?と聞かれたら、日本人だと何て答えるのでしょうか。
せんべい、まんじゅう、羊羹…。何となくこのあたりの和菓子を思い浮かべそうですが、それでも人によって様々な答えが出てくるのではないでしょうか。
ところが、オマーンという国は、ほぼ100パーセントの人がこう答えるのです。
「ハルワー・オマーニーヤ」。
オマニースイーツと英語では呼ばれているこのお菓子。ういろうや羊羹、くず餅などのようなぷるんとした食感と、すっとするカルダモンの香り。
バクラワやクナーファなど、中東のお菓子は地域によって微妙な違いがあるものの、同じようなものになりがちですが、ハルワー・オマーニーヤは他の国ではほとんど見かけない(ドバイなど湾岸諸国にはお店があるようですが)、その名前に恥じないオマーンオリジナルの菓子なのです。
ハルワー・オマーニーヤは、砂糖、コーンスターチ、サムナ、サフラン、バラ水、カルダモン、ナッツを大鍋で煮詰めて作ります。
2時間以上、常にかき混ぜながら煮詰める作業はかなりの重労働。
家庭で作るよりは、専門店で買うお菓子という雰囲気です。
町にはこのお菓子の専門店があちこちにあります。
「ディーワーニーヤ」はハルワー・オマーニーヤの代表的なお店の一つ。数店舗支店があります。
シックな店内には試食できるスペースがあります。
全種類試食できるので、お気に入りが買えますね。
どれどれ、一口。え、おいしい。
ぷるるんとした食感、しっかり甘いけど、後を引かないすっきりとした風味。
実はこのお菓子、数年前にイランに旅行に行った際、乗り換えのオマーンの空港でお土産に買い、一度食べた事があったのです。
そのときの印象は、何だか固くて、ただ甘いだけの微妙な塊。
そんなわけで、あまり期待していなかったのですが…。
このぷるん感は、おそらく日が経ってしまったらなくなってしまうのでは。
3カ月ぐらいは日持ちのするお菓子とは言え、やはりできるだけ新しい方がよいのでしょうか。
一番安い物だとクルミ入りのシンプルなもの。
イチジクやミックスナッツが入ったものや、サフランやバラ水の風味が強いもの、いろいろあって楽しい。個人的にはバラ水のが好きでした。
500グラムから買えますよ。
コーヒーも無料で飲めるのがうれしい。
お菓子のフレーバーと量を決めたら、容器を選びます。
オマーンと言えばのハンジャル型の容器や、
素敵な陶器も捨てがたい。
お菓子の箱とは思えないような、うっとりするような容器がたくさん。
ちなみに容器代は別料金です。
デフォルトの容器は、洗面器のようなプラスチック製。
これでも十分かわいい。
店員さんは、物静かなオマーン人の青年。
話していると、いつものごとく?エジプトにお住まいですか、なんて聞かれます。
「日本語と、アラビア語と、もしかして英語もできるんですか?僕は英語もエジプト方言もできないので…」と店員さん。この控えめさ、エジプトにはない。
店員さんによると、オマーンの代表的なお菓子は、やはりこの「ハルワー・オマーニーヤ」なんだそう。
バクラワやバスブーサなど、一般的に「アラブ菓子」と呼ばれるものは?と尋ねると、もちろん、そういったお菓子も食べるけど、それはあくまでもレバノンなどのお菓子という認識。冠婚葬祭や人が集まる時には、とにかくハルワー・オマーニーヤが欠かせないとのこと。
そんなお話をしていると、
「サラームアライクム」と、やけに大きな声で挨拶しながら店に入る男性。
エジプト人だ。私にはわかる。
男性が用件を伝えると、店員の青年が気付く。
「あ、もしかしてエジプトの方ですか?こちらの方もエジプトに住んでおられるみたいなんです。」
「うっそ!まじで。俺、出身はアレキサンドリア。お宅はどこにお住まいで?カイロ?」
ああ、懐かしい。エジプトの人。いや、たった数日カイロを離れただけで懐かしいというのは大げさな上に、オマーンで働くエジプト人はめちゃくちゃ多い。
泊まっているホテルのレセプションの人もエジプト人ではないか。
それなのに、あ、エジプト人、と、どことなく和むのはなぜなのか。
話がエジプト人になってしまいましたが…。
オマーンのお菓子はどうやら本当にこの「ハルワー・オマーニーヤ」なんだなぁ。
もちろん他のお菓子もあって、例えばアラビア語のオマーン料理の本には、イランのお菓子のようなものが多く掲載されているのは興味深い。
しかしながら、オマーンのお菓子以外で、ほぼ全員の意見がこんなに一致することって他にあるでしょうか。
これは是非とも専門店でぷるんとしたオマーンスイーツを味わってほしい。