
今やエジプト街角グルメと言えば必ず名前があがる「コシャリ」。
米にマカロニ、レンズ豆が混ざった、初めて食べる人には不思議な、でも慣れると違和感がなくなっていく、そんな料理です。
町にはコシャリ専門店があちこちにあり、しかも安い。安食堂の類が意外と少ないエジプトで、旅行者でも気軽に入れるありがたいお店です。
コシャリは、先述の通り専門店で食べることができ、メニューもコシャリのサイズを選ぶくらいで、あとはコーラなどの飲み物と、ミルクプリン「ムハラビーヤ」などがあるくらい。
このシンプルさも魅力の一つです。
そんなコシャリ専門店。実はもう一つメニューがあるのです。
それは「ターゲン・マカローナ」。

ターゲンは一般的にはオーブン煮込みのことを意味します。
モロッコ料理などでおなじみのタジンと同じ綴りですが、エジプトではあの三角帽子の鍋ではなく、素焼きの器などを使います。
マカロニのオーブン煮込み。
作り方はとってもシンプルで、ペンネとあらかじめ作っておいたトマトソースを器に入れてオーブンで焼くだけ。
最後にぱかっと容器をお皿にひっくり返して完成です。
ペンネはソースを吸って言わばぶよぶよになってしまいますが、それがまたよい。
シンプルにソースを絡めたペンネもおいしいですが、ぎゅっと煮込まれたこの一体感がターゲン・マカローナのおいしさなのです。
コシャリ屋では、一人前用のアルミの蓋つき容器を使います。

私の知る限りでは、家庭でこの容器は使わないと思います。
当然一般家庭にあることもない(はず)です。
お店だと茹でたペンネとソースをこのアルミ容器に入れてオーブンに入れますが、家庭だとペンネを茹でずに緩めに仕上げたトマトソースと一緒に素焼きの器などに入れてじっくり火を通す場合が多いよう。
私がエジプト人から教わったのもこの方法でした。
オーブンに入れておく時間は長くなりますが、もっちり味のしみ込んだペンネは極上のおいしさです(ペンネの質にも大いに影響されますが…)。
もちろん通常通りペンネをあらかじめ茹でておく、または固めに茹でておく、といった方法もよく用いられていますよ。
ちなみに先述のエジプト人は、我が家にお店用のアルミ容器があることにとても驚いていて(普通はないらしい)、「えー、じゃあこの器で作ろう!お店みたい!」とはしゃぎ気味でした。
❝コシャリ屋のもう一つのメニュー❞なんてタイトルをつけたものの、全てのコシャリ屋にあるわけではなく、何となくコシャリの陰に隠れがちなターゲン・マカローナ。
そんな中、ここなんかはターゲン・マカローナが有名です。
(当然コシャリもあります)

バーバー・アブド。
ダウンタウンのタラアト・ハルブからアタバ方面に向かう途中にあります。
お店の作りはちょっと変わっていて、建物が分散しています。
時間帯にもよりますが、ひっきりなしにお客さんがやってきますよ。

ちょうど空いた瞬間に撮りました。他の席との結構距離が近いので、タイミングが難しい。
自分がこの状況で外国人にカメラを向けられたら不快ですからね。声をかければよいのだけど。
庶民的なお店ですが清潔です(エジプト比)。
ターゲン・マカローナのメニューは肉(ひき肉)かチキンを選ぶだけのシンプルなもの。
スゴッ(ソーセージ)やレバーのトッピングもできます。
このメニュー構成はだいたいどこのお店も同じです。

今日はチキンにしました。
ぐにゅっとしたペンネにソースがまんべんなく絡んで、裂いたような鶏むね肉が思いの外たっぷり。黒コショウが単調になりがちなマカローナのよいアクセントです。
ちょっと少ないかな、と思いますが、ぎゅっと密着しているので、食べ終わるころにはちょうどよく満腹です。
余談ですが、お店で使われているアルミの容器。
アレンジ好きの日本人である私(アレンジ好きという形容詞は日本人にかかっていますよ。私は特にアレンジ好きではありません)は、この容器に砂糖や切り刻んだ昆布なんかを入れています。
密閉するわけでもなし、軽いわけでもなし、日本には他にいくらでも素敵な保存容器はあるのですが、今のところ何となくこれがしっくりきています。
エジプト人の反応は「へ、へー(苦笑い)」という感じですが。
そして、この容器でプリンなんかも作りますよ。



このアイデアはエジプト人にも好評でした。
いつもはコシャリの陰に隠れがちなターゲン・マカローナ。

次にコシャリ屋に行くときは是非マカローナを。
こういうので作ったらよさそう。