サマルカンドで2日間を過ごし、名残惜しいですが一旦タシケントに戻ります。
今回はサマルカンドからタシケントまで列車で4時間の旅。前回のアフラシャブ号の倍の時間がかかりますが、のんびりの旅もまた楽しいのです。
どこまでも続きそうな荒野を走り抜け、同じような風景に飽きてきたころには、
羊の群れが現れ、ハッとしたり。そんな4時間を過ごし、大都会タシケントに到着しました。
タシケント南駅。ん?ジャヌービ?アラビア語と同じなのかな?(アラビア語で“南”はジャヌーブ)そんなことがちょいちょいあって、時々ちょと単語がわかったりして面白い。でも結局ウズベク語は全く分からないのだけど。
ちなみに、ウズベキスタンの駅は正面から入ることができません。建物の脇から荷物検査をして駅に入場します。
ホテルに荷物を置いて、早速お昼ご飯を食べに出かけましょう。
ここはウズベキスタンの名物料理「プロフ」を食べたいところ。
プロフとは、たっぷりの人参とお肉を炊き込んだ米料理。
サマルカンドでは結局プロフを食べずに終わってしまいました。特に避けていたわけではなく、むしろプロフを食べる機会をうかがっていたのですが、うまく巡り合えず。いや、プロフだけがウズベキスタンの料理ではないし、偶然とはいえサマルカンド名物を食べられたことは幸運と言えるのかもしれません。
首都タシケントならプロフの名店と呼ばれるところもわんさかあるようだし、期待が高まります。
ところが、目星をつけておいたお店に向かうも何と改装中。
とりあえず腹ペコを落ち着かせようと、半ば仕方なく、同じ通りのサムサ屋に入ることに。
サムサとはインドなどでおなじみの、いわゆるサモサ。生地で挽肉などを包んで焼いたものですね。ウズベキスタンでもよく食べられており、絶対に美味しいとは思うのですが、まあ大体予想がつく料理。あー、はいはい、あれね、と思っていたのですが…。
入ったお店はサムサ専門店で、メニューはサムサのみ。
窓口で個数を告げ、支払いを済ませサムサを受け取ります。
手のひらサイズのサムサはずっしり重く、表面は指で軽くたたくとコツコツと音が鳴るくらいしっかり固い。飲み物は定番の緑茶。コーラなどを飲んでいる人もいましたが、大抵の人はお茶を飲んでいる様子でした。
一口かじるとバリっと歯切れのよい音が口の中に響きます。
羊のむわっとした匂いと、こぼれそうでこぼれない肉汁。中の生地は肉汁を吸っているのか思いの外しっとりしています。中身はてっきり挽肉だと思っていたのですが、実は5㎜角ぐらいの角切り肉がゴロゴロ。それでいて玉ねぎが多めで、最初に手にしたときの重さとは裏腹に思ったよりあっさり。一つ食べ終わるころにはもう一つと手が伸びてしまうのです。
これは…。めちゃくちゃおいしい。あー、はいはい、サムサね、と思っていたなんて、とんだ勘違いです。早い段階で気が付いてよかった。このサムサも何軒かのお店で試してみないと。
プロフを食べられずに意気消沈していましたが、これは嬉しい誤算。こういう偶然がおいしい物に出会うきっかけなのでしょう。いや、もしかしてウズベキスタンって何を食べてもおいしいのか。
お昼ごはんはサムサで軽めだったこともあり、夕食はどうしてもプロフを食べたいところ。
ここはひとつ有名店に足を運んでおくことにします。
やってきたのは「ベシュ・カザン」という、プロフの有名大型店。以前はプロフセンターという名前だったようです。
ベシュ・カザンとは、ウズベク語で「5つの鍋」という意味だとか。観光客も地元の人も訪れる、誰もが知るお店のようです。それにしても「セントラル・アジアン・ピラフ・センター」とはすごいな。ウズベキスタンを超えています。
プロフセンターという言い方は、ウズベキスタンでは一般的だそう。実はプロフは「オシュ」と呼ばれることも多く、ウズベク語でプロフセンターは「オシュ・マルカジ」。
プロフのお店を探していると、○○オシュ・マルカジという名前のお店がやたら目につきます。おっと、マルカジは、アラビア語のマルカズ(センター、中心etc…)と同じかい?
ここのお店は巨大な鍋での迫力あるプロフづくりが見られることが特徴のようです。しかし、この日は夜に訪れたこともあってか、一般的なサイズの鍋での調理のみでした。それでもこの時間(夜8時過ぎ)でもいくつかの鍋でじゃんじゃか作っているなんて!
ちょうど一つの鍋があいたようで、隣の鍋では米を投入していました。
米の下にはたっぷりの油と人参、お肉が入っています。
客席はすこぶる広く、回転も早いので、待つことなく席に案内されます。
メニューはプロフ3種類とトッピング、サラダ、ノン(パン)と飲み物のシンプルなもの。
ちなみに米(プロフ)とパン(ノン)を一緒に食べることは普通のようです。これはアラブでも同様なので驚きはしないのですが、炭水化物攻め!とは思います。
今回は「トイ・オシュ(結婚式のプロフ)」(手前)と「チャイハナ・オシュ(お茶屋のプロフ)」(奥)をチョイス。
トイ・オシュは、名前こそ豪華なのですが、どうやら基本的なプロフのよう。
ブドウの葉で米を包んだドルマはトッピングです。ひよこ豆やバーベリー(レーズンかも)も入っています。お肉は羊で、細かく裂いてあります。
ウズベキスタンでプロフ食べるのは初めてであるものの、プロフ自体は今までも食べたことはあったので、味は想像していたのですが…。これは、全然違う!そういうことだったのか!
米が何というか、クニッ、むにっとして、芯があるわけではないのだけどアルデンテのよう。
パラっとしているけど、チャーハンでも、パエリアでもなく。ましてや軽いバスマティでもない。
米粒が大きく、そして油でコーティングされてむにむにと噛み応えが抜群。
一粒一粒がソロ活動しているかのような存在感です。
続いてはチャイハナ・オシュ。
トッピングは馬肉の腸詰「カズ」をチョイス。
トイ・オシュよりも色が濃く、羊の匂いも強めの印象です。ひよこ豆やバーベリーは入っていませんでした。
トイ・オシュとどう違うのか。日本語で調べてもその違いを説明しているサイトなどが見つからなかったので、後日ウズベク語でチャイハナ・オシュの動画などを10本ぐらい観てみました。その結果、どうやらこのチャイハナ・オシュは、最初に羊の脂をじっくり炒めて、その溶けだした脂で調理するのが特徴のよう。残った脂はカリカリになり、トッピングとしてプロフにのせていました。なるほど、写真右下のカリカリの脂はそれだったのか。どおりで羊の匂いも濃いわけだ。
食べ終わって先ほどの鍋のもとに行くと、プロフが炊きあがっていました。
米の下に隠れていた肉を掘り返して別の容器に分けています。
すごい油だな…。
穴あきのヘラのような物で肉をすくって、米を振り落とすようにポンポンと何度か空中にはねさせています。
お腹いっぱいだったはずが、もう一度羊の脂と米の炊ける匂いを嗅ぐと、また食べたくなる、魅惑の夜のプロフです。
缶詰のプロフがあるみたい。お肉は入っていないみたいなので、現地で見つけたらお土産にもいいかもしれません。